国をまたいでの相続、日本の相続税は掛かるのか?

2015/11/20

日本とアメリカに資産・拠点を持つ方の相続税について

日本に住居、資産、または親戚等を持ちつつ、アメリカにも拠点をお持ちである方にとって、自国である日本において、いつか支払うことになる相続税について頭を悩まされる方は多いと思われます。また、日本での相続税が掛かる基礎控除額(相続税がかかるか否かを判定する為の基準額)が2015年の1月をもって、より低くなってしまったため、近年においては、節税対策のため、日本からの資産を移転しようと考え、その場合の国をまたいだ国際的な税務ルールについて、頭を痛ませる方も多々いらっしゃることと思われます。本記事においては、親と子の居住国または子の国籍によって、日本の相続税が掛かるか否かについてご紹介させていただきます。

 

 

2015年1月に変更された相続税の基礎控除額

2015年1月以前の基礎控除額を計算する数式は、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」でした。2015年1月以降当数式は「3000万円+600万円×法定相続人の数」に変更されました。亡くなった時の総資産から上記数式にて計算された基礎控除額を差し引くことによって、相続税の課税対象額を計算することができます。また、当数式においては、相続人の数が増えるほど、基礎控除額の額が高くなりますので、差し引ける金額が高くなるほど、課税対象金額が少なくなります。

 

例を挙げてみますと、親の一人が亡くなり、6000万円の資産を残し相続人が一人いた場合、2015年以前ですと6000万円から5000万円を差し引くと1000万円の課税対象額が算出され、その金額に対し相続税が課税されました。しかし2015年以降は、6000万円から3600万円を差し引くと2400万円の課税対象額が算出され、前年よりも高い課税対象額について、相続税が課税されることになります。

 

上記からも、2015年の基礎控除額の改定によって相続税を支払うことになる基準額、及び相続税の支払い額自体が、前年よりも高くなってしまったことが伺えます。これによって、日本以外の海外に資産を移転させたい方もますます増えることになるでしょう。

 

 

財産をもらう人が外国籍でも、あげる人が日本在住なら課税対象に

平成25年以前においては、日本に住む親が、アメリカにおいて所有する財産をアメリカ国籍を持つ子に贈与をした場合、日本の贈与税の対象外と取り扱われていました。ですので、アメリカで生まれでアメリカ国籍と日本国籍を両方取得し、22歳をもってアメリカ国籍を選んだ子に贈与をした場合、日本の贈与税は掛かりませんでした。しかし、平成25平3月以降税制改正により、財産をもらう人が日本国籍以外の外国籍のみで海外財産をもらったとしても、その財産をあげる人が日本に住んでいた場合、財産をもらう側に日本の相続税や贈与税が課税されることになりました。

 

 

税制改正を踏まえた節税対策

上記税制改正で節税対策がなくなってしまったと考えられるかもしれませんが、対策がいくつかあります。

  1. 親と子も日本人国籍を変えず、5年超海外に居住して、そこで財産移転をする。

    例として、親と子も日本人国籍を保持し、二人でハワイに渡るとします。ハワイに5年以上居住すれば、親がハワイで所有する財産を、共にハワイに居住する子に贈与した場合、日本の贈与税はかかりません。

  2. 渡す親が5年超海外に居住し、もらう子が外国籍だと、海外財産とみなされる。

    まず、財産を渡す親がハワイに5年居住したとします。財産をもらう子が米国籍の場合、親が5年間の居住期間後ハワイの財産を子に贈与した場合、日本の贈与税は掛かりません。この場合、子が米国籍のみの場合に限り、贈与税が課税されなく、米国籍も日本国籍も両方保持する子には、日本の贈与税が課税されます。

  3. 渡す親が5年以内の海外居住者で、もらう子は外国籍だと、海外財産とみなされる。

    例えば親がハワイに移り住み、日本からの資産を使いコンドミニアムを購入したとします。その場合米国籍の子にコンドミニアムを贈与すれば、日本の贈与税は課税されません。ただし、中途半端にハワイと日本を行き来していると、日本の居住者とみなされる可能性があり、その場合、子に日本の贈与税が掛かります。そうみなされない為に財産を渡すほうがハワイ居住者にならなければいけません。(つまりハワイに5年以上住まなければいけません。)

 

 

節税対策のまとめ

まとめますと、親と子の両方が日本国籍を持っている場合には、親子で海外に移住して5年居住する必要があります。子の国籍が日本国籍でなければ親子で海外に移り住み、すぐに海外で所有する財産を贈与することができますが、中途半端に日本と海外を往来しない様、注意する必要があります。

 

国をまたぐ財産の移転は複雑で、頭を悩ませます。ですが、正しい知識を習得することで良い節税対策を編み出すことができます。

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執筆者

本郷法律事務所

本郷 友香 弁護士

ハワイ州とカリフォルニア州、両方の弁護士資格を所有し、信託、遺言書作成、プロベート(検認手続き)等を含むサービスを主に提供する弁護士。過去数年間は日本に在住し、大手米国会計事務所にて法務、会計の分野において、国際的な仕事に携わっていたとともに、多種の文書において豊富な翻訳経験がある。日本語・英語のバイリンガルであり、両言語において、会話と読み書きが堪能。