Portability(ポータビリティー)とは

2015/10/09

Portability(ポータビリティー)の定義

以前掲載したQTIPに関する記事で、夫婦が連邦相続税(2015年は$5,430,000を超える資産について掛かる税金)の免除を最初の配偶者が亡くなった時と最後の配偶者が亡くなった時に2回受けるためには、ABトラスト(夫婦間のトラスト)を作る必要がある旨をご説明致しました。しかし、オバマ大統領によって成立された2012 American Taxpayer Relief Act(2012年米国納税者救済法)によって、連邦相続税の免除に関し、Portability(ポータビリティー)が2013年以後の年度に対し、恒久的に認可されました。ポータビリティーとは、最初の配偶者が亡くなった際、その亡くなった配偶者の連邦相続税の免除額で使われなかった分を、生存配偶者の免除額として使われる様、譲渡し、生存配偶者が亡くなった際、最初の配偶者の免除額、及びに、生存配偶者自身の免除額を二つ使えることにする制度を言います。つまりポータビリティーとは、ABトラストを作らずに、生存配偶者に亡くなった配偶者の免除額と自身の免除額を両方使える制度を指します。

 

 

事例

Portability(ポータビリティー)が適用されなかった場合

Aさん(夫)とBさん(妻)が結婚していて、各自$4,000,000の資産を保有し、夫婦で資産を合算して$8,000,000あった場合、ポータビリティーを適用するか否かで、免除額の取れる分が大幅に変わってしまいます。

まず、ポータビリティーが適用されなかった場合、Aさん(夫)がまず亡くなった際、Unlimited marital deduction(無制限の婚姻控除)が適用されるため、Bさん(妻)には、自身の$4,000,000を無税で譲渡することができます。Bさん(妻)は夫の死後、$8,000,000に相当する資産額を所有することになります。しかし、Bさん(妻)が亡くなる際、夫の連邦相続税の免除額分はBさん(夫)の死とともに消えてしまう為、総額$8,000,000の資産に対し、Bさん(妻)自身の免除額分のみが適用されることになります。ですので、2015年度の場合、$1,028,000に相当する連邦相続税を支払うことになります。計算は以下の通りです。

$8,000,000 (資産の総額)- $5,430,000(妻の免除額分) = $2,570,000(相続税の対象となる資産)

$2,570,000 (相続税の対象となる資産)× 40% (相続税率)=$1,028,000(相続税の支払額)

 

Portability(ポータビリティー)が適用された場合

上記と同じ事例を見てみますと、Aさん(夫)が亡くなった場合、上記と同様に、Unlimited marital deduction(無制限の婚姻控除)が適用されるため、夫の死後、Bさん(妻)は、無税で$4,000,000の夫の資産額を引き継ぐことになります。しかし、上記とは異なり、Bさん(妻)が亡くなる際、亡き夫(Aさん)から資産を引き継いだ際に適用されなかった夫の免除額分も使えることになり、自身の免除額分と合算して、二つ免除を受けられることになります。計算は以下の通りです。

$8,000,000(資産の総額)- $10,860,000(両方の免除額分)=$0 (相続税の対象となる資産)

上記の通り、両方の免除額を適用することができた場合、相続税の対象となる資産が$0となるため、連邦相続税を支払うことはありません。

 

 

ポータビリティーがあっても、ABトラストを作成する利点

ここまで読まれますと、ポータビリティー制度があるのですからABトラスト(夫婦間のトラスト)を作る必要はないのでは?という疑問が出てくると思います。ですが、以下の理由により、ポータビリティー制度があるにも関わらずABトラストを作成する利点があります。

  1. トラストに入れた資産については、資産価値の上昇を妨げることができます。
  2. トラストに入れた資産は、債権者から保護することができます。
  3. 一度以上結婚をしていた場合、トラストを作成することによって、現在の配偶者だけではなく、前の結婚からの子供達に、トラスト上の受取人と指定することによって、資産が渡る様にすることができます。
  4. 連邦相続税とは別に、州によって、州の相続税が請求される場合があります。その際、現在の時点では、ハワイ州だけにおいて、州の相続税においてポータビリティー制度が適用され、生存配偶者は州の相続税において、死亡配偶者と自身の免除額を使えることになっています。そのため、その他の州においては、トラストを作成しなければ、生存配偶者が州の相続税において、二つの免除額を受けることができません。

 

 

Portability(ポータビリティー)の様な新しい制度が出てきていますが、トラストを作成する利点も踏まえ、自身にとって最適な相続対策を考える為、専門家にご相談されることをお勧めします。

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執筆者

本郷法律事務所

本郷 友香 弁護士

ハワイ州とカリフォルニア州、両方の弁護士資格を所有し、信託、遺言書作成、プロベート(検認手続き)等を含むサービスを主に提供する弁護士。過去数年間は日本に在住し、大手米国会計事務所にて法務、会計の分野において、国際的な仕事に携わっていたとともに、多種の文書において豊富な翻訳経験がある。日本語・英語のバイリンガルであり、両言語において、会話と読み書きが堪能。