Q. 前任地ではどのような業務に携われていたのですか?

 

A. ドイツ(フランクフルト)で3年ほど、主にヨーロッパの金融事情をオブザーブするという 仕事に携わっていました。フランクフルトは、欧州中央銀行というユーロを管理する国際機関の本部があり、その他にドイツの中央銀行の本部があり、またドイツ銀行など、非常に大きい銀行の本店を構えている金融の中心地なんですね。在留邦人や旅行者の方の安全を守る仕事の他に、日本文化紹介、特に経済面をしっかり把握して日本に報告する業務でしたね。

 

Q. ハワイに来られて9か月ほどですがハワイの土地はいかがですか?

 

A. ハワイに来て全く仕事の内容の重点が違うことが新鮮な感触でした。その新鮮な感触と 同時に驚いたのが、ここハワイがヨーロッパとは全く違うことでした。アメリカは本土を含めて初めての勤務ですが、ハワイは日本人が愛好する場所だなと思いました。ヨーロッパとも日本とも違う気候とか社会生活とか、リズムが緩やかであり寛容であるということ。それから明るいんですね。人の絆や思いやりで社会の動きをカバーしている感じがします。人間的な所ですね。私の性質にあっている場所だと思いました。

 

Q. 食文化はいかがですか?

 

A. ヨーロッパ圏の勤務が長くて、それもドイツですから食生活の中心は一つはジャガイモであったし、それから肉ですね。海とはあまり縁がなかったというか(笑)またどちらかというと、生であるよりは缶詰や塩漬けにしたものが多かったので、日本に比べると自然の物を食べることが少なかったような気がしました。それに比べハワイは、果物が沢山ありますね、それも1年中。食生活も開放的な感じがしました。また驚いたのがボリュームが多いことですね。日本よりも1.5倍から2倍ですものね。非常にいいことです。体格の方も大きいですし(笑)

 

Q. ハワイではどのような方とお会いになられましたか?

 

A. 先日、 裏千家のハワイセミナーがありお招きいただいたんです。朝のセミナーで千玄室氏のお話しを聞きました。お茶を通して人間の生き方をお話下さったのですが、悟った境地にいらっしゃる方なので非常に羨ましいと思いました。同氏は特攻隊で出撃を待っていたところで終戦になったそうですね。だから残りの人生は死んだものと思って、死んでいった人達のことも含めて、世の中のために動きたいとおっしゃっていました。世俗的なことを吹っ切っていらっしゃるとの印象を受けました。今90歳ですが、大変お元気で明晰な方と思いました。やっていらっしゃることも革新的です。そもそも裏千家が支部を作ったのはハワイが最初なんだそうです。そんな方にお会いできるのもハワイならではですね。また、荒 了寛さん(天台宗 開教総長)にも会いましたね。ハワイに来て50年60年、ひとつのミッションを持って頑張って暮らしながら、自身の考えを高めて、ハワイと日本のために尽力されています。当地には、日本が大切にしてきた文化・伝統の継承・保存に貢献されている方が結構おられ、仕事柄 色々な方にお会いできる機会を頂きますのでありがたいですね。これからもどんどん沢山の方に会いに行きたいと思っています。

 

Q. ハワイの日系人に関してはどのように思われますか?

 

A. ハワイには日本の良い伝統が残されているんですね。挨拶をしていく、食事の時にお陰様でという意味で手を合わせる。何か自然と祖先に対する敬いがきちんとしていますね。それも若い方々も同様に。行事や仏事関係なども行われています。ハワイの4,5世の方々が日本語は話さないが、その慣習をするんですね。それは親御さんが教えているからなんです。日本の良いところを残したいという気持ちがあるんですね。日本よりも人と人との関係に潤いがあるように思われます。日本古来の折り目正しさとか、相手に対する思いやりだったりします。これが実は「アロハ」なんだと思いました。日本の慣習と相和するところがあるのだと思いました。伝統文化なども守られていますよね。雅楽もあるんですよ。感銘しました。

 

Q. ハワイをめぐる日本との関係の現状と、アメリカと日本の今の関係をどのようにお考えですか?

 

 A. 日本とハワイは格別な関係にあります。ご存知のように観光客は年間140万人に上り、日系人が20万人。邦人が2万人住んでいて、社会の重要なところで活躍されています。たえず日本との交流がありますね。アメリカ人でありながら、日本人の魂を発信している地域は他にありません。非常に緊密な関係がありますね。と同時に、アメリカが今新しい秩序を作り始めていて、活動の拠点を太平洋にシフトしています。それは軍事的だけではなくて、経済的にも関与を強めていこうとしている。平和と安全、そして繁栄を目標にした軍事的な安定感を、政治的な安定感を、そして経済的な繁栄 というものを中身とする、アメリカだけではなく周りと連携しながら、それから作り上げていくという動きがあります。そんなときにアメリカが最大のパートナーとして見ているのが日本であります。日本とアメリカの関係は今後、更に関係が深まっていくことでしょう。そして、特にハワイは日米の関係の中で、大きな意義を持っていると思います。日系人関係では、もちろんロサンゼルスがありサンフランシスコがあり、ブラジルがあります。でも、日本とアメリカの関係を位置づけるときに、ハワイは歴史的に見ても現在を見ても、劇的に大きいです。ご存知の通り、1853年 日本に開国をせまったのはアメリカです。その時にハワイが中継地になっているんですね。 もう一つは明治時代に ハワイが日本に親交を求め、ハワイへ沢山の移民が渡りました。ハワイはアメリカと日本を結ぶ絆、鎹になっているんですね。私たち総領事館がしなければいけないことは、在留邦人、観光客の安全・安心が第一ですが、その他に、このいい関係(アメリカと日本の)を更に強めることですね。そしてハワイの存在価値をアメリカの中で上げていきたいと思います。

 

Q. 常々、地域/地方の活性化の大切さを語られていらっしゃいますが?

 

A. 私が、フランクフルトに勤務していた時に最初にしたことが、大阪-関西を活性化するために「たこ焼き」を持って来たことなんです。大阪に2年ほどいた時に、大阪の地盤沈下が嘆かわしいというのと至る所で聞きました。実力も歴史もあるのに、東京に比べてなぜ明るい未来がないのかと嘆いているので、「私は国内で出来ることは何もないけれど、海外で出来る応援はあるので海外に行ったらやりますよ!」と約束した相手が、現橋下徹大阪市長なんですよ。その時に大阪の商工会議所や道頓堀商店街に人たちに頼んだら、「世界たこ焼き委員会」を作ってくれまして。まずは大阪のB級グルメをドイツで紹介しました。ドイツに店を作ったら、次はフランス、スペインをやっていうことプランを立てて、起業応援ですよね。街の大型デパートなどで試食会もアレンジして応援しました。ハワイにもと思ったのですが、ハワイにはもうありますものね(笑)ハワイには日本の食べ物が沢山ありますし。ですから、ハワイと日本の交流をするためには、切り口を新しい形にするのがいいのかなと色々と考えています。

 

Q. どのような形でハワイと日本を繋げていかれたいでしょうか?

 

A. 私の一つのテーマが、「海外に来たら地方を発信する」ということなんです。地方を応援したいんですね。日本の発展の基本は地方だと思うんです。地方が活性化すると国全体が元気になって、地方が発展すると国が発展する。そのために政府や地方自治体が努力をしていますが、これを色々な人が一緒になって後押ししないといけないですね。地方は国内の事業が停滞する、国内的に行き詰っている閉塞感がありました。その時に考えたのが、国内が駄目なら海外に出ればいいじゃないということです。国内では需要がない、魅力が発信できていないというのならば、日本という衣をくっつけて地方の中身を押し出したらどうでしょう。海外で稼いで、それを日本に持って帰ればいいと思うんですね。その海外で築いた国際交流での元気を地方に還流して、それを起爆剤にすればいいんですよ。その際には各国にある日本の大使館、総領事館は大いに応援すべきだと思っています。例を挙げあると、新潟の三条市及び燕市は地場産業で手工芸で刃物を作っています。フランクフルトの時に地元の企業を招いてマッチングの場所を提供しまして、その地方の技術を発信するということを行いました。それは今でも続いています。ただ、日本の中小企業が海外に出るのは容易ではないですね。言葉の問題や情報が十分でなく不安がありますよね。その時に力になってくれるのが「姉妹都市」なんです。なぜかというと、地方が海外に出るときには何の手掛かりもない。物を売りたくてもパートナーもいないし何も分からない。どうしたらいいか?という時に、姉妹都市の方々と連携して、色々な機会に地方の物産を持ち込み、そこで地方を発信するんです。宣伝をするんです。また海外の姉妹都市関係者が日本に来た時は手助けするという総合交流ですよね。人の交流、文化交流、そして経済交流になっていくと思います。そうやって地方をどんどん海外に出して行きたいですね。そして地方の色が「Made in Japan」になっていくのではないでしょうか。

 

Q. 健康のために運動などはされていますか?

 

A. ジョギングをしていますが、これはホノルルの街を知るためにしています。もう景色はほとんど見ましたね 。道路も分かるようになりました 。瓦や板葺の屋根などを見ると、日本の田舎に戻ったような感じになりますね。ちょっと暑いですが、この暑さが肌に合います。私は暖かいところの生まれなので違和感がないんです。確かに暑いですが、かつて勤務したエジプトの暑さとも違うし、日本の暑さに比べたらとても過ごし易いと思います。そして、風が吹くでしょ。それがいいですね。米領サモアでも走ってみましたがサモアは風がなかったですね。ハワイはとても走りやすい環境ですね。サーフィンがある、自転車がある、ゴルフがあるとハワイは多様なスポーツが出来ますからベストですね。

 

Q. サモアと言えば、サモア国内以上の人数の移民がハワイに住んでいますが。

 

A. ハワイよりも更に大きい人たちが多いですね (笑) 相撲とかラグビー、フットボールとかをしていて、非常にいい骨格をされていますねぇ。若い男性は瞬発力が高そうなので、日本に来ていただきウェイトリフティングとか柔道とか剣道とかやって頂くと、ポリネシア文化の方々が日本で活躍の場があるのではと思いました。そのためには若者交流が出来たらいいなと考えています。

 

Q. ハワイを一言で語ると?

 

A. ハワイの持っている日本にとっての価値- これは観光だけではなくて、 アメリカという世界の中のトップの国の中で、こんなにも日本人が胸を張れて、活躍出来て、主要な役割を果たせるという場所(州)は、ハワイ以外にはないと思いますね。格別な意味を持つ存在ですね。ハワイが日本と強い関係を持っているということを、アメリカ国内でもっともっと知ってもらうことが大事だと思います

 

Q. 最後にハワイに住む日系人と在留邦人の方々にメッセージをお願いします。

 

A. 総領事館は、ハワイと日本の経済や文化の交流をするところですが、一番大きいのは在留邦人や旅行者の安全と安心の滞在を応援する場所です。日本政府のハワイ事務所的な役割もあります。もちろんパスポートの発行や戸籍・国籍業務、証明書発行、そして在外選挙をする場所としても使っていただいております。日本国民のための場所でありますから、何かお困りの時には駆け込んで来てください。市役所・町役場と思って下さい。日本国民の利益のために動く場所ですので、色々な意味で活用していって頂きたい。またハワイにおいては日本企業(ハワイと日本の)の活動を円滑にして利益を得るように応援をしていきますので、いつでもご相談をお待ちしています。「最後は総領事館」と思って下さい。

 

在ホノルル日本国総領事館 総領事プロフィール

 

重枝 豊栄

 

1952年生まれ。中央大学法学部卒業後81年外務省入省。査察室長、経済産業省大臣官房参事官(環境担当)、外務省大臣官房領事移住部旅券課長、大阪府府民文化部国際交流監を務める。オーストリア、スイス、エジプトの各日本大使館、ウィーン国際機関日本政府代表部で在外勤務。在フランクフルト総領事(ドイツ)を経て、2012年10月、在ホノルル日本国総領事として着任。