アメリカ特有の遺産相続方法「トラスト」

2015/06/23

日本にはない、アメリカ特融の相続方法

アメリカに不動産を所有される方等は、アメリカ特有の「トラスト」(信託)を耳にしたことが常々あることと思います。

 

日本では遺言書による相続しか選択肢がないのに対し、アメリカの場合、トラスト(信託)を作成し、遺族等に遺産を残す選択肢があります。アメリカのトラスト(信託)とは、生前にトラスト文書を作成することにより、所有財産をそのトラストの「箱」の中に入れ、その「箱」の中に入れた財産を、任命された管財人(Trustee)が管理するものです。日米両国にて資産を所有されている方にご注意頂きたい点としては、トラストに入れる財産は、アメリカで所有する財産のみに該当するということです。よって、日本において所有する財産をトラストに入れることはできません。

 

トラストの主な特徴としては、その文書を作成することにより、裁判所のプロベート(検認手続き)を回避することができ、トラストの指示に従い、遺産を速やかに遺族に分配できることです。

 

 

トラスト文書を作成することの利点

トラスト文書による指示があれば、以下のような事態が避けられます。

 

  1. プロベート(検認手続き)を回避でき、時間と費用を節約できます。

    裁判所のプロベートとは、遺産の分配においての不正行為等を回避する為、裁判所が故人の家族・親族関係を確認する為の作業です。アメリカでは日本と同様の戸籍謄本がない為、家族・親族関係を確認する為の作業が必要になり、そのため、プロベートの作業が行われます。ハワイではプロベートの作業に一年以上掛かる場合が多く、その間、親族等への遺産の分配は保留され、プロベートに立ち会ってもらう弁護士も雇用することになります。弁護士費用等も時間が経つにつれ、どんどん加担されることになります。

  2. 指示通りに財産を分配することができます。

    トラストを作成していれば、プロベートを回避し、トラストの指示通りに財産を分配することができます。

  3. プライバシーを守ることができます。

    トラストは遺言書と異なり、裁判所に提出しない為、その内容は公にされることはありません。よって、遺産の内容等を含むプライベートな情報を保護することができます。トラストとは異なり、遺言書は裁判所に届けられ、公にされる為、近所の方にまで遺言書の内容を見られる可能性があります。

  4. 両方の配偶者が連邦遺産税の免除を受けることが可能になります。

    まず2015年においては、$5,430,000の資産額まで、連邦の遺産税の免除が適用されます。つまり、資産額が$5,430,000を超えない場合、連邦の遺産税を支払う義務はありません。

    夫婦の場合、A-Bトラストという夫婦間のトラストを作成した場合、両方の配偶者が遺産税の免除を受けることが可能になります。 (つまり、残された配偶者が合計$10,860,000の資産額まで、遺産税の免除が受けられることになります。)

    難しい概念ですので、例を挙げて説明致しますと、最初の配偶者が亡くなった際、$5,430,000の資産を保有していたとします。生存配偶者も既に同じ額の資産($5,430,000)を保有していたとします。亡くなった方が$5,430,000の資産を全て生存配偶者に残した場合、生存配偶者は$10,680,000の資産を所有することになりますが、亡くなった方から受け継いだ最初の$5,430,000については無制限配偶者控除(Unlimited Marital Deduction)が適用される為、遺産税を支払う義務が及ぼされません。しかし、生存配偶者が亡くなった際、トラストを作成していなかった場合、残りの$5,430,000については、遺産税を支払う義務が生じます。 しかし、A-B トラストを作成してあった場合、両方の配偶者に無制限配偶者控除額が適用されるため、残存配偶者が亡くなった際、$10,680,000の資産額まで、無制限配偶者控除が適用されることになります。

    アメリカ特有の遺産相続方法 トラスト

  5. 生前、トラストを修正することができます。

    Revocable Trust(撤回可能なトラスト)と称される、一般的に良く作成されるトラストを作成しますと、生前、財産の配分や管財人等を含む、トラストの内容を変更することができます。

  6. 生命維持装置を外す決断等、前もって指定することを可能にします。

    亡くなった後に初めて効力を発揮する遺言書とは異なり、トラストと共に、付随文書(Advance Health Care Directive等を含む幾つかの文書)を作成することによって、植物人間になった際の生命維持装置を外す意志、判断能力を失った場合の代理人の指定等を含む決断を、前もって指定することができます。

 

早めに遺産計画をすることで、家族の負担が減らせます。

アメリカにおいて不動産、お金等を含む財産をお持ちの方は、生前、早めに遺産計画に取り組むことが好ましいです。健康と判断能力が伴っている内に、遺産計画の準備をされることが、遺族への将来の負担の緩和に結びつきます。

 

 

※この情報は2015年6月時点でのものです。法律は随時変更されますので、詳細は専門家にお問い合わせ下さい。

 

 

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執筆者

本郷法律事務所

本郷 友香 弁護士

ハワイ州とカリフォルニア州、両方の弁護士資格を所有し、信託、遺言書作成、プロベート(検認手続き)等を含むサービスを主に提供する弁護士。過去数年間は日本に在住し、大手米国会計事務所にて法務、会計の分野において、国際的な仕事に携わっていたとともに、多種の文書において豊富な翻訳経験がある。日本語・英語のバイリンガルであり、両言語において、会話と読み書きが堪能。