アメリカのトラスト(信託)に付随する文書について

2015/07/31

アメリカのトラスト(信託)とは

まず最初に前回の記事の復習になりますが、アメリカのトラスト(信託)とは、生前にトラスト文書を作成することにより、所有財産をそのトラストの「箱」の中に入れ、その「箱」の中に入れた財産を、任命された管財人(Trustee)が管理するものです。トラストの主な特徴としては、その文書を作成することにより、裁判所のプロベート(検認手続き)を回避することができ、トラストの指示に従い、遺産を速やかに遺族に分配できることです。

 

 

トラストに付随する文書等

上記の通り、トラストを作ることにより、財産を保全・管理することができます。しかし、以下の付随文書もトラストと併せて作成することにより、遺産保全以外の面で、判断能力を失った場合等の財政的、または医療に関する判断を委ねるための代理人の指定等、ご自身の意志等を予め指定することができます。以下においては、付随する文書を4種類ご紹介させて頂きます。

 

  1. トラストに付随する文書等

    まず、Pour-over willという、「包括的な遺言書」とは、通常の遺言書とは異なり、相続財産の全てがトラスト(信託)に転送されることを指定する文書です。当Pour-over willを作成することにより、その作成以前に存在するいかなる遺言書を解約することができ、相続財産の全てをトラスト(信託)の「箱」に入れることが指定できます。Pour-over willは、被相続人が亡くなった後、倉庫や戸棚の奥に、生前発見されなかった生命保険の証書等が見つかった場合、Pour-over willの指定通り、トラスト財産の中に転送されること等に役立ちます。Pour-over willが作成されていなかった場合、発見された財産等が、誰に、またはどの様に分配されるかについて、もめ事が発生する可能性があり、当文書を作成することによって、それを防ぐことができます。

  2. General Durable Power of Attorney(財政管理のための永続的委任状)

    次に、General Durable Power of Attorneyという「財政管理のための永続的委任状」とは、被相続人が判断能力を失った場合、被相続人の財政的な処理、または管理を請け負ってくれる代理人を指定することを可能にする文書です。代理人は第一代理人を指定し、その他2名、または3名程、後任の代理人を指定することができます。代理人は、被相続人の所有不動産を投資、または管理する、或いは所有物の売買を代行する等の権利を請け負います。また、被相続人が病気で入院し、その間郵便物を代理人の住所に転送する手続き等を郵便局で行う権利も有し、被相続人が判断能力を失う、または健康状態が悪化した場合、代理人が代行して、被相続人の税務申告書に署名すること等が、当委任状によって可能になります。

  3. Advance Health Care Directive(医療に関する事前指示書)

    上記General Durable Power of Attorneyと異なり、Advance Health Care Directiveという「医療に関する事前指示書」は、被相続人が病気等で判断能力を失った場合、ご自身の医療についての判断を、代理人に委ねることを可能にする文書です。被相続人は同文書において、代理人に被相続人の臓器提供をしてもらう、または葬儀等の儀式を遂行してもらうこと等も指定することができます。また、日本と異なり、植物人間になった場合、生命維持治療を停止、または続けてもらう意志や、健康を損なうことがない限り、できるだけ自宅に住む意志等も、同文書において、予め指定することができます。

  4. HIPAA(医療保険の相互運用性と責任に関する法律)上の診断書等の開示認可書

    HIPAA(医療保険の相互運用性と責任に関する法律)上、医療情報をその対象である本人以外に開示することはできませんが、当Authorization for Release of Protected Health Informationという「診断書等の開示認可書」を作成することによって、当書面において指定される代理人に、被相続人が判断能力を失った場合、その医療情報、または診断書等を開示することができます。代理人は複数指定することができますが、通常、掛かり付けの医師も代理人の一人に指定されます。代理人は、開示された医療情報を基に、被相続人の病気に対し、治療等を得ることができます。

 

 

トラスト作成は、万が一の事前準備

最後に、トラストは、財産保全、およびプロベート(検認手続き)を避けるための手段として効力を発揮しますが、それと共に作成される付随文書等は、病気になった、または判断能力を失った場合等においても、生命維持治療を受けるか否か等の意志を事前に指定することができることで、重要な役割を果たします。色々な点で事前準備ができるという意味で、トラストを作成することには意義があります。

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執筆者

本郷法律事務所

本郷 友香 弁護士

ハワイ州とカリフォルニア州、両方の弁護士資格を所有し、信託、遺言書作成、プロベート(検認手続き)等を含むサービスを主に提供する弁護士。過去数年間は日本に在住し、大手米国会計事務所にて法務、会計の分野において、国際的な仕事に携わっていたとともに、多種の文書において豊富な翻訳経験がある。日本語・英語のバイリンガルであり、両言語において、会話と読み書きが堪能。